親の世代交代で家族の力が弱くなってきている!? 自立できずに“一家丸ごと引きこもり化”も

時代の流れ

ここ最近、家族の力が弱くなってきていることにより、引きこもり当事者が福祉制度を利用せざるを得ないケースが増えてきている。

 医療機関に外来で訪れる当事者たちの中には、明確な疾患があるわけでもないにも関わらず、なかなか通学や就労できるようにならない、といったケースが少なくない。

 そこで、家族に「こんなところがありますよ」と相談先などをいくら紹介してみても、家族のほうに力がなくて動けなくなっているという。

 先日、東京都の町田市役所で開かれた「ひきこもり事例検討会」に出席したとき、そんな報告が、地域で開業するクリニックの医師から投げかけられた。

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親の会立ち上げ、引きこもり問題の認知精力的に活動してきた団塊世代の親

 これまで多数を占めていた「団塊の世代」の親であれば、かつて学生運動を起こしてきたときのように、子どもの社会復帰に対する思いからエネルギーがあふれるくらいの行動力があり、社会へ向けた情報発信力もある程度は健在だった。

 ところが、親の年代が代わり、さらに家庭の生活困窮化が進んでいく中で、家族の力が弱くなり、今後ますます社会の力が必要になってきているというのである。

 たしかに、これまでの親の世代は、引きこもり状況に陥った自分の子どもの将来に危機を感じ、支援機関などの情報を収集したり、親の会を立ち上げて交流したり、自ら支援活動を通して世の中に訴えたりして、引きこもりという問題の存在を国に認知させてきた。逆に言うと、親のエネルギーがあまりに強すぎるあまり、その子どもたちが動けなくなっているのではないかと感じられる面もあったほどだ。

 その一方で、十分な額とはいえないまでも、それなりの退職金や年金収入などによって、何とか家庭を維持し続けることもできていた。

 ところが、親の世代交代が進んで、家庭の環境も少しずつ変わりつつあるようだ。

祖父母の介護だけが社会とのつながり“一家全員引きこもり”の深刻

 別の自治体の話だが、前々回の連載で、80歳代の祖母の年金だけを頼りに生活していた50歳代の両親と、10~20歳代の孫たちが、一家丸ごとひきこもり状態になっているという家族のことを紹介した。

 父親は、数年前のリーマンショックの頃に会社をリストラされて以降、ハローワークには通っていたものの、ずっと仕事に就けない状況のままだ。

 また、母親は、自宅からも出られない状態が続いている。

 孫たちも、昼頃、外には出かけていくようだが、学校を卒業してから仕事に就くことができていないという。

 たまたま祖母を介護するために家に入っていた関係者から相談を受けた事例だったが、一家全員が“引きこもり”状態にあった。

 その祖母も最近亡くなって、唯一の年金収入が途絶えたいま、この家族はこれから、どうなってしまうのだろうか。

 ちなみに、家族の両親も孫たちも、医療機関にかかったり、行政や支援機関などに相談したりしている様子もなかったという。介護が入ることもなくなり、唯一の社会とのつながりもなくなった。

 しかし、こうしたケースは、いまや珍しいことではない。最近、筆者は様々な縁があって、地方の街で当事者会や家族会を呼びかけたり、開催したりしているが、家族の力が弱くなってきて、一家が丸ごと地域から引きこもっている状況に似たような話は、あちこちで聞くようになった。

 高齢者の年金が家族のために使われているケースで、とくに高齢者が認知症の場合、地域包括支援センター(高齢者への総合的な生活支援の窓口となる地域機関で、市町村が設置主体)が、経済的な意味での「高齢者虐待ではないか」と指摘する事態も増えていると、前出の医師は説明する。

親が借金を背負って、当事者も含めた家族全体が身動きが取れなくなっているケースも、少なくない。

 バブル崩壊以降、経済構造が大きく変わってきたことも影響しているのだろう。

 当事者の親の年代が、これまでのように退職金や年金といった安定した収入を得られる見込みが小さくなり、家庭を支えきれなくなってきているのだ。

 そんな困窮家庭から子どもを世帯分離しようにも、当事者はアパートが借りられない。生活保護など福祉に頼ることへの抵抗感もある。

 それでも、親自身が、相談に訪れるなど、動こうとしない。だから、当事者も家族も自立できずに地域で孤立し、生活が煮詰まる。

 年金で何とか維持できていた親の時代と違い、これから先は、まるでパンドラの箱を開けるように、大変な事態が一気に押し寄せるのではないか。

当事者の親も社会から断絶“声なきSOS”をどう掘り起こすか

前回の連載でも取り上げた、制度の狭間にいて孤立する人たちの“声なきSOS”に、私たちの社会はどのようにして関わることができるのか。

 冒頭の事例検討会では、その場で報告されたものとは別の当事者の話になるが、まず母親には自立支援を申請し、環境の変化を受け入れるようにと何度も勧めたという。しかし、その母親自身、役所に手続きに行くだけの力がなかった。

 長年引きこもる当事者の親たちは、会社の同僚や友人らとの誘いを断わり、だんだんと社会から撤退して、地域に埋もれていくことも少なくない。

 親自身のメンタル面での問題もあって、相談につながらないといった家族へのサポートは、地域の課題でもある。

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